写真・図版
冷泉家の敷地内に完成した土蔵「北の大蔵」=2024年11月12日、京都市上京区、清水謙司撮影

 歌人の藤原俊成(しゅんぜい)、定家(ていか)親子の流れをくむ歌道の冷泉家(京都市上京区)に、新しい土蔵「北の大蔵」が完成した。「和歌の家」の膨大な文化財を守り継ぐ収蔵庫で、12月に特別見学会がある。

 冷泉家には数万点の文書類が伝わり、御文庫(おぶんこ)と呼ばれる土蔵で国宝の古今和歌集や定家の日記「明月記(めいげつき)」などを保管する。もともとは八つの蔵があったが、戦後に三つが朽ちた。代わりのプレハブ倉庫も2018年の台風で被害に遭ったことから、20年から建設を始め、今春完成した。通常の蔵の2倍の大きさで、東西14メートルの2階建て。1年間の乾燥期間後、書や道具類を収めるという。

 コンクリート製の収蔵庫が主流の中、貴重な文化財を長年守ってきた土蔵の実績を重視。壁土を何度も塗り重ねるなど、伝統工法を用いた。国や自治体からの補助はなく、約2億円の建設費は朝日新聞文化財団の助成や寄付を募るなどしたが、今後も内装や周辺整備に費用がかかる。

 特別見学会は、一口5千円からの寄付者が対象。文化財を収める前の蔵の内部に入れるほか、冷泉家住宅(国重要文化財)も見られる。冷泉家の後継者・野村渚さんは「江戸時代の天明の大火でも御文庫は残った。土蔵には文化財を守る耐久性の良さがある。何百年と続く北の大蔵で、文化財を後世に伝えたい」と話す。

 12月3、6、8、14の計4日間。各日4回開き、各回25人(先着順)。申し込みは特設サイト(https://tiget.net/users/1408742別ウインドウで開きます)。問い合わせは冷泉家時雨(しぐれ)亭文庫(075・241・4322=平日10~17時)。(清水謙司)

共有