エチオピアの吟遊詩人酒場をイメージした展示室=2024年9月18日、大阪府吹田市、筒井次郎撮影

 吟遊詩人は、世界各地で様々な顔を持つ。英雄譚(たん)の語り部、権力を揶揄(やゆ)する庶民の代弁者、そしてエンターテイナー……。各地を移動しながら詩歌を歌い語る、そんな人々の息吹を伝える特別展「吟遊詩人の世界」が、国立民族学博物館(民博、大阪府吹田市)で開かれている。

 民博の創設50周年を記念した特別展で、アジア・アフリカの8地域の吟遊詩人を、民族楽器や写真、現地の雰囲気を漂わせた空間で紹介する。「歌い語る」という無形の文化を、モノを並べる博物館で見せるため、様々な工夫を凝らす。

 会場は、中央に広場を設け、周りを八つの展示室が囲うという構成だ。広場を起点に各展示室と行き来しながら、好きな順番に見学できる。まるで異国の町の広場にいるようだ。

 そして、歌い語る様子は、研究者が撮った動画で見られる。会場の各所に計24のモニターやスクリーンが設けられた。

 紹介する吟遊詩人のうち、東アフリカ・エチオピアのアズマリは、弦楽器を奏でながら酒場で歌う。数百年の伝統があり、祝祭などで聴衆を褒めたたえ、時には庶民の代弁者として権力者に抵抗してきた。

 展示室では、都市の酒場を再…

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