再犯を繰り返してしまう受刑者の社会復帰について、地域で考えるきっかけに――。そんな思いから、香川大学生が高松刑務所などとコラボして、新しい刑務所作業製品を開発した。大学生が日常使いできるようにと考えたエコバッグで、今後、学内の生協で販売する。
開発したのは、出所者が地域で孤立しないよう支援している香川大学の学生団体「さぬき再犯防止プロジェクトPROS」と、高松刑務所や高松矯正管区。10日には、メンバーの学生らとエコバッグの縫製を担う受刑者が、高松刑務所で対談した。
「縫い目がすごくきれい」
対談に先立ち、刑務作業を見学した学生らは、できあがったエコバッグを見て目を輝かせた。
PROSは2020年8月に発足し、現在は20人ほどが活動する。刑務所を出た人の「居場所と出番」を地域につくろうと、定期的に茶話会などを開いている。
一昨年の大学祭で刑務所作業製品を展示して紹介したのがきっかけで、今回の開発が始まった。
対談には、PROSの学生4人と顧問の平野美紀教授、縫製担当の受刑者3人が出席し、約40分にわたって語り合った。
「自分たちのこと知って」直接対談も
大学生協で売っている弁当やペットボトル飲料が入れられるデザインにしたことを学生らが話すと、受刑者らは納得した表情だった。
ある受刑者は「刑務所の中は閉ざされた世界。刑務所にいる人たちでも、これだけの技術があるんだって伝わったらいいな」とバッグ作りにかける思いを語った。
「自分たちのことを怖がらずに知ってほしい。出所した後の更生に手を差し伸べてほしい」といった声も出た。
高松刑務所は再犯者が大半を占め、いったん出所した後、社会に受け入れてもらえないと感じた経験を話す受刑者もおり、学生らはじっと耳を傾けていた。
企画から完成まで携わってきた大学院2年生は「どういう気持ちで作っているのか聞けて良かった。受刑者もすぐ隣にいる地域の一員なんだと思ってもらえれば」と語り、製品が受刑者と地域をつなぐきっかけになるよう期待を込めた。
完成した製品は香川大のオープンキャンパスでも配布するという。(木野村隆宏)