高橋正人弁護士

 袴田巌さんの再審無罪の確定は、1980年代の四つの死刑再審無罪事件以来の「死刑台からの生還」だった。いま、死刑制度をどう考えるべきなのか。「死刑賛成弁護士」という共著があり、犯罪被害者の弁護に取り組んできた高橋正人弁護士に話を聞いた。

     ◇

 袴田さんの再審無罪が確定しました。冤罪(えんざい)が起こるたびに、執行されると取り返しがつかないことになるから死刑制度を廃止すべきだという議論が起こるのですが、論理のすり替えではないでしょうか。

 毎年多くの方が自動車事故で亡くなっていますが、自動車の廃止を訴える人はいません。世論調査を見ても国民の多くは、死刑制度を支持しています。冤罪を防ぐための努力をすることこそが大切です。

被害者遺族の思いは「死んで償って」

 冤罪とされた本人は本当に無念でしょう。一方、被害者遺族にとっては二次被害です。なぜなら、犯人の死刑執行を待っていたら突然、冤罪がわかって犯人ではないことになり、だからと言って真犯人が捕まるかといえば、何十年も経っている以上、事実上不可能だからです。

 被害者遺族は「真犯人」への…

共有
Exit mobile version