裁判所に8年以上、毎日欠かさず通う「傍聴マニア」が札幌にいる。法廷でのやりとりを書き留めたノートは約1300冊。ある刑事裁判で、初めて泣きながらペンを走らせた。
札幌地裁806号法廷。証言台の前に20代の女性が座っていた。
自死希望者としてSNSで知り合った年下の女性2人と集団自殺を図り、一人たすかった。2人に対する自殺幇助(ほうじょ)の罪に問われていた。
被告は、事件直前に3人で一緒に過ごした時間について語る。すしを食べたり、ゲームセンターで遊んだり。亡くなった女性が最期に「3日間楽しかったよ」と言った笑顔が忘れられない、と涙ながらに振り返った。
傍聴席で、札幌市に住むパート従業員の前田小百合さん(59)は自身の視界がゆがむのを感じていた。「傍聴しながら涙をこらえきれなかったのは初めてだった」。被告の言葉を書き留める手だけは止めなかった。
被告には10月、保護観察付きの執行猶予判決が言い渡された。前田さんは「私も学校や職場で人間関係に悩み、死にたいと思ったことがあった。人生は長い。被告にはなんとか乗り越えてほしい」と話す。
前田さんが初めて裁判所に足…