現在における考古学の到達点のひとつともいえそうな論集が完成した。「何が歴史を動かしたのか」(雄山閣)と題する3巻だ。大上段に振りかぶった壮大なタイトルにふさわしく、総勢約80人にのぼる第一線の研究者が論考を寄せた。
「自然史と旧石器・縄文考古学」「弥生文化と世界の考古学」「古墳・モニュメントと歴史考古学」に分かれ、3冊合わせると千ページ近い。
論集を編んだのは国立歴史民俗博物館名誉教授の春成秀爾さん(81)。編者への献呈的な色合いを帯びるためか、広い空間的視野と時代幅が持ち味の本人の学風を投影して、扱うテーマも多種多様だ。考古学の論集には珍しく、哺乳類の盛衰といった古生物学から、原人の心や戦争の本質、ジェンダー論にまで及ぶ。複雑な人類史は総合的・立体的にとらえて初めて理解できる、ということか。
目からウロコの論考も少なく…