
江戸幕府に禁じられていたとされる人工妊娠中絶を専門にする非合法の「女医者」を主人公に、愛や女性の権利を描く映画「恋ほおずき」の撮影が、福岡県内で今春から始まる。筑後地域の田園風景が映画監督の心を動かしたといい、野外撮影は筑後・朝倉地域の13市町を中心に県内でおこなわれる予定だ。
諸田玲子さんの同名時代小説が原作。浜本正機監督が企画と脚本も担当し、主演は久留米市出身の俳優田中麗奈さんが務める。
浜本監督に原作を薦めたのは妻だった。だが「脚本に起こすと難しくて苦労した」。以来14~15年、この作品と向き合ってきたという。
映画を象徴するような「キービジュアル」になると考えたのが、主人公が田んぼを歩くシーンだった。「いい場所がないかと探していた」
音楽についても、オーケストラではなく人の歌で寄り添いたいと考え、声をかけたのが、久留米市在住のシンガー・ソングライター野田かつひこさんだった。その縁で筑後地域を訪れ、「田主丸、大刀洗の田んぼを見て感動した」という。
筑後地域では毎年のように大雨災害に見舞われている。今回の映画制作では「復興を支援しよう」と久留米市に制作会社を設立。資金調達や撮影、仕上げを地元ですることで収益をできるだけ地元に還元することにも取り組む。
1月15日に原口新五市長を表敬訪問した田中さんは「ふるさとで映画を撮るという夢のようなプロジェクトに今も半信半疑。みなさまのお力をおかりしながら、やるからには絶対いいものにしてお客様を映画館に呼びたい」。浜本監督は「ロケ地の筑後地域の方々に理解して愛してもらえるような映画を撮りたい」と語った。
撮影は今春始まる予定。2026年の公開を目指している。