自由人で、遊びの達人。自称シンガーソング・コメディアン。一体なにが本職なのか分からないが、飄々(ひょうひょう)と我が道を行く。「分岐点がないから人生は振り返らない」「良い感じに書いてよ。全然おれが言ってないこと書いていいから」と豪語するタレントの所ジョージさん(69)から、大切な「みっつ」を聞き出しました。
所ジョージさんの「みっつ」
①ギター ②世田谷ベース ③家族
自分が人生を振り返ったときにさ、あそこでああすれば良かったなとか、してて良かったなみたいな、良いことと悪いことが両方あるわけじゃん。どっちにしろ今の自分にしかならないんだよ。よし、今日から違う自分になろうとか思ったことないよ、おれ。
目の前のことが忙しくて振り返る時間がもったいない。反省もなければ、これで成功したとか何にもないね。それを考えるやつはね、みんな暇なんだよ。暇な人が考えてるんだよ。こっちは仕事も遊ぶのも忙しいんだからさ。今から無理して振り返るからね。
《拓殖大学に入学するも、2年生に進級できなかったため、音楽の道を志す》
音楽との出合いだ。いいこと言った。君、役に立つね。ギターだよ、ギター。出合いは中学生のとき。ちやほやされたいじゃん、格好良くってさあ。アコースティックギターを買ったんだけど、全然うまく弾けないからすぐにしまい込んじゃって。
大学に入ったときに最初から履修が少なくて、進級できないのが確定した。おやじになんて言い訳しよう。そんなときに「芸能界の活動が忙しかったから」ってことにしようと思って。で、しまい込んだギターを引っ張り出した。
オリジナルの曲じゃないと意味ないから、20個ぐらい作った。いくつか断られたんだけど、(レコード会社の)東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)が面白いから来いよと言ってくれた。そこで宇崎(竜童)さんと出会ったんだよ。名付け親の。
おれ、今でもギターなんかうまくないよ。箸を使うのと同じで、だんだん触ってるうちにね、使えるようになってくるんだよ、これが。
《トークとギターという独特のスタイルで地位を確立。テレビにも出演するように》
僕のやってることはね、誰でもできるんですよ。みんなやんないだけ。若い子はね、初めからほめられたいとか完成度が高いものを作りたいとか思うわけじゃん。評価に及ばずでいいのよ。続けていくうちに、だんだん評価されていくんだから。
評価されないまま死んでいく人もいるよ、いっぱい。でもそれでいいのよ。自分の持っている宝物がいっぱいになればいい。人に見せる必要はない。それが経験なんだよ。経験という宝物でね、宝箱が増えてくんだよ。おれ、新しいことにチャレンジなんかしてないよ。みんなが見落としていることをやっているだけ。
《2006年、東京都世田谷区に事務所兼遊び場として「世田谷ベース」を造った。趣味で集めた大量のグッズなどが所狭しと並び、自ら耕した畑もある》
確かに世田谷ベースを造ったのも分岐点になるのかもね。おれが世田谷に基地を造ってあげるよと思って。元々は空軍基地のつもりだったのよ、あれは。だからそういう名前になってるんだよ。今はすっかりおれの物で埋まってるけどさ。
BSフジでさ、世田谷ベースの様子を放送しているんだけど、あれいいよね。バラエティーとはまた違って、台本もなくただしゃべってるだけ。収録もカメラマンしか来ないからね。シンプルでいい。
台本読むとイライラするから、普段から見ないようにしてるのよ。細かいことが気になってしょうがないんだ、おれは。バカにでも分かるようにちゃんと書けって思っちゃう。気になることは本番前にいらない。カンペとか出たらバカにしてるのかと思うよ。目線外すんじゃないよ、茶の間の人に失礼でしょうよ。
ベースにはね、いろんな人が来ますよ。(建築家の)隈研吾さんなんかは、世田谷ベースには未来が詰まってるとか言ってたよ。
汚い場所だなあと思う人もいると思うんだけど、あれは片付いてるんだよ。何でも自分で動かしたいんだよね。本棚みたいに1~50巻まで一つひとつ並んでほしくないの。家主がわかってたら、それが整理整頓なんだよ。何言ってんだよ、ゴミ屋敷じゃないよ。
あそこにはペットボトルを1本も置いてなくて。絶対嫌なんだよ。よく政治家とかが討論してるときにペットボトルが置いてあるじゃん。おれだったら蹴るね。急須に湯飲みだよ。でも、山とか公園ではペットボトルも飲むよ。場所によるんだよ。
世田谷ベースは素敵ですよ。カテゴライズされてないから面白いよね。大人になると、子どもじみたことはバカバカしいとかジャッジされちゃうから、しないよね。植木の陰におもちゃのライオンがいたりスナイパーがいたり。隠れミッキーみたいなのがいるんだよ、あちこちに。気付いた人にだけ説明してあげるの。
《番組や著書では、未来は1973年だと発言している》
18歳のときからね、インチキなものしか開発されてないよ。スマホ? 使うよ。歌作ってるときはさ、超便利だよ。昔は郵送とかだったけど。これはね、1973年にも持って帰る。(SNSの)スタンプとかはいらねえよ。
《TBS系のバラエティー番組「所さんお届けモノです!」では、たびたび所さんの家族のエピソードが登場する》
家族がいなかったら、おやじ…