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和解成立後、記者会見をする佐藤由美さんの義姉、佐藤路子さん(仮名)=2024年9月24日午後4時40分、仙台市青葉区、阿部育子撮影

 旧優生保護法(1948~96年)の下で強制不妊手術を受けさせられたとして、宮城県内に住む佐藤由美さん(60代、仮名)が国に慰謝料を求めた訴訟は24日、仙台高裁(倉沢守春裁判長)で和解が成立した。国が慰謝料1500万円などを支払う。由美さんの義姉、路子さん(仮名)は「裁判が始まって6年以上、たくさんの人に支えられてここまで来られてよかった」と話し、長い闘いを振り返った。

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 佐藤さんの訴訟については、旧法を違憲として国の賠償責任を認めた7月3日の最高裁判決で、国の賠償責任を前提に額を決めさせるため、審理を高裁に差し戻していた。

 佐藤さんは1歳の時に口の手術を受けた際の麻酔が原因で、知的障害になった。15歳の時に「遺伝性精神薄弱」とされ、不妊手術を強制された。

 同じく県内に住む飯塚淳子さん(70代、仮名)が1997年から被害を訴え続けてきた活動を知り、路子さんは「妹も同じ被害者なのではないか」と考え声をあげた。飯塚さんには手術記録がなかったが、佐藤さんには手術記録が残っており、2018年1月に全国で初めての提訴に踏み切った。これをきっかけに全国で提訴が相次ぎ、飯塚さんも加わった。

 20年で賠償請求権が絶対的に消滅する「除斥期間」という「時の壁」が2人を阻み、地裁、高裁ともに敗訴。だが最高裁判決で大法廷は「国が除斥期間を理由に請求権消滅を主張すること自体が権利乱用だ」と指摘。国の賠償を認め、一連の訴訟の原告だけでなく、今後新たに被害を訴え出た被害者も広く救済される道を開いた。

 和解内容は原告団、弁護団と国が13日に締結した合意に基づくもの。療養中の佐藤さんの代わりに和解協議を進めてきた路子さんは記者会見で、「社会がよくなればいいと思って提訴した。これで収まることなく、人権侵害のない社会であってほしい」と話した。

 さらに24日、仙台地裁で係争中だった男女3人による訴訟も、国が慰謝料1500万円などを支払う内容で和解が成立した。飯塚さんは24日に和解に至らず、来月、改めて協議に臨む予定。(阿部育子)

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