道をあけてください――。サイレンを鳴らし急行する救急車から、そんなアナウンスが聞こえる時がある。人命救助のため一刻を争う際は、現場到着の遅れは文字どおり死活問題で、熱中症患者への出動要請が急増する7~8月は、特に一般ドライバーや歩行者らの配慮が不可欠だ。
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「最近は道を譲ってもらえないケースが少なくない」。首都圏で救急車を運転していた経験のある総務省消防庁の男性職員はそう話す。「そもそも救急車の存在に気づいていない人が多いように感じる」
この職員によれば、遮音性が高い車で、空調効率を上げるために窓を閉め切って、音楽をかけていれば、サイレンの音は聞こえづらい。イヤホンを着けた歩行者が、サイレンに気づかずに交差点を横断し続けるケースもよくあるという。また、運転技術が足りずにうまく道を空けることができないドライバーも少なくないとも感じる。
救急車の出動の多さも原因にありそうだ。
総務省消防庁の統計によると、2023年の全国の救急出動件数(速報値)は763万7967件で、前年から40万件以上増え、過去最多となった。1日あたりに換算すると、2万件近くが出動している計算となる。
出動件数の増加に伴い、現場近くにある救急車両では足らず、遠方の車両が向かうケースが増えた結果、救急車の現場への到着時間は平均約10.3分(22年)と過去最長に。これまで以上に、緊急車両の「道の確保」は重要度を増している。
同庁担当者は「もし自分が救助を待っている立場だったらと想像し、緊急通行に協力してほしい」と呼びかける。(大山稜)
安全な譲り方、ポイントは
緊急車両の接近に気づいた時…