四国地方に住む男性(50)には、2人の子どもたちに伝えていないことがある。自らの病気、そしてそれが子どもたちの人生にも関わること――。今、妻とともにどう伝えるかを悩んでいる。
1999年の秋。当時25歳だった男性は、大阪府内のクリニックにいた。
3年ほど前から血便が出ていた。会社では日付を超えて残業するほど、激務が続いた。忙しさを理由に体調不良を放置してきたが、数日前からおなかに閉塞(へいそく)感があった。食事が進まず、飲み物しか口にできなくなっていた。いよいよおかしいと思い、受診を決めた。
「あっ」
内視鏡で大腸の中を見ていた医師が、つぶやいた。医師は、すぐに大学病院を紹介すると言った。
なんだ、そんなに悪いのか。
大阪府内の大学病院では、大腸の中でがんが大きくなって腸をふさぎ、腸閉塞を起こしていると説明された。すぐに入院し、腸の詰まりを取る処置が始まった。
症状が落ち着いたころ、主治医から、進行がんで手術が必要だと告げられた。さらに思いがけない質問を受けた。
「家族に大腸がんの人はいますか?」
「腹膜転移」を告げられショック
男性のがんは、腸内にたくさ…