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「あばれ祭」で火の粉を浴びながら担がれる巨大なキリコ©渋谷敦志
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 能登半島地震から1年を前に、国内外の紛争や災害の現場で取材を続ける写真家の渋谷敦志さんが、能登で暮らす人々を写した写真集「能登を、結ぶ。」を出版する。石川県の珠洲や輪島などで撮影した約100枚が収められている。渋谷さんは「この本を通じて、今後の能登のあり方を一緒に考えるような場を作りたい」と話す。

 渋谷さんは震災直後の1月2日、日本赤十字社の医療チームに同行し、被災地入りした。道路が寸断され、なかなか前に進めず、「とにかく現場が遠かった」。自衛隊と一緒に徒歩で孤立集落に赴き、話を聞いた。「みんな『もっと大変な人がいるから、私らなんか全然大丈夫』と言いますが、実際は緊張と不安の中で数日耐えしのぼうという雰囲気だったと思います」。珠洲市折戸町では、道路に横たわる巨岩をすりぬけようとする女性と遭遇した。ガソリンとガス缶を背負い、隣の同市高屋町まで届けるという。「自衛隊の車でも通れないようなところ。彼女から感じた強い意志の正体を知りたいと思いました」

 この1年間、海外での取材と並行して計7回被災地に通った。写真集は被写体となった人々に直接手渡す。「能登の人と、遠く離れた人たちを本で結ぶことが、写真家として自分にできること。がれきの写真ばかりでなく、この美しい土地を守ろうとしている人たちの思いを、ちゃんと届けたい」

 写真集「能登を、結ぶ。」(税込み4180円)は全国の書店、アマゾンで今月23日発売。あわせて、東京と金沢で写真展も開催する。2025年1月7~12日、東京都港区北青山のナインギャラリー。1月26日~2月2日、金沢市南町のきんしんギャラリー。いずれも入場無料。

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