「またあした」君の一言で気がついた 君があしたの理由になってた――。三重県の高校生が詠み、福井県越前市のコンクールに寄せた恋のうた。この地では今も、万葉集にみえる恋物語が人を想(おも)って紡がれることばを引き寄せている。
現存する日本最古の歌集「万葉集」巻十五には、現在の越前市味真野に縁のある男女2人の相聞歌(そうもんか)が収められている。天平11~12(739~740)年ごろ、味真野に流罪となったとされる中臣宅守(やかもり)と、奈良の都に残った妻の狭野(さのの)弟上娘子(おとがみのおとめ)が交わした63首。
娘子の歌には、夫が流された地名が切ない思いとともに登場する。
味真野に宿れる君が帰り来む 時の迎へを何時(いつ)とか待たむ(味真野にいるあなたが帰ってこられるのをいつと思って待てばいいでしょうか)
その恋心をまっすぐに詠んだ1首は、娘子の歌の中でも特に有名だ。
君が行く道の長手を繰り畳(たた)ね 焼き滅ぼさむ天の火もがも(あなたの行く長い道のりをたぐり寄せて畳んで焼いてしまうような天の火があったらよいのに)
一方の宅守の情熱も負けてはいない。
我が身こそ関山越えてここに…